ニッポンの産後ケア

ニッポンの産後ケア

産後ケアリスト認定講座の講義内容を抜粋してみなさまにお届けしている情報ページです。
日本産後ケア協会が考える「ニッポンの産後ケア」について、ぜひこの機会に触れてみてください。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.1】
~現代女性を取り巻く環境と問題点-子育てへの負担感を強くするママたち~


高齢出産の増加、家事と仕事の両立など―母親となる現代女性の傾向を知ることは、産後ケアリスト®に求められていることは何か、を探る上で非常に重要なポイントです。
ここからは、現代女性を取り巻く環境と問題点について、少しお話ししていきましょう。

近年の女性の社会進出はめざましいものがありますが、「結婚・出産により家庭に入り育児に専念するのが女性の役割」と旧来どおりに位置づけられることはまだまだ少なくありません。
また、核家族化や地域社会の互助機能の低下などを背景に、育児に慣れない出産直後の母親たちが孤立しがちになるとともに、抱える問題も多様化しています。

その結果、育児の不安と一人で戦いながら「自由な時間が持てない」「体が疲れる」「気が休まらない」といった子育てへの負担感を強くする母親が増えてきています。
実際に新米ママに聞いた出産後の悩みをピックアップしてみると、「一人でいるのが不安」「子育てそのものに漠然とした不安がある」「子育てについて相談できる相手がいない」「協力者(夫・両親)との価値観の違い」などを挙げる人が増えているのです。
また、これまでの「出産後は数日の入院を経てすぐに自宅へ戻る」といった出産後の動きも、産後ママの育児の不安や子育てへの負担感を強める一因になっているかもしれません。

たとえば、出産し、病院を退院した後、産後ケアセンターで体力の回復と育児の不安をゆっくりと解消していき、穏やかで健やかな心身で自宅に戻ることや、育児中に心身を休ませたいときには産後ケアセンターに行き、産後ケアリスト®のサポートを受けて自宅に戻るなど、産後ケアを上手く取り入れることによって、現代の産後ママが抱える育児の不安や子育てへの負担感を和らげることができるかもしれませんね。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.2】
~核家族の増加-「昔は三世代家族が当たり前」は誤解~

現代女性を取り巻く環境と問題点について、もう少し細かくお話しいたします。
まず、一つめの課題は、核家族の増加です。

誤解されやすいのですが、「昔は三世代家族が当たり前」というのは少し違います。きょうだいが多い時代は、長男以外は家族がそれぞれ独立するからです。
では、何が当たり前だったのかというと、「きょうだいが4人以上は当たり前」の時代は、「親族は近くに住居を構えることが当たり前」でした。そのため、親族による子育て、介護を含む互助が成り立っていました。

しかし、1970年代以降、都市化が進むことで、実家あるいは親族が近くにいない環境での核家族が増加しました。現在、1980年代生まれが子育てをする世代になっています。
つまり、都市部の核家族で育った世代の女性が出産する年齢になっているのです。

さらに、子どものいる世帯は少子化の影響で減少しているにもかかわらず、子どもがいる世帯に占める核家族世帯は増加傾向にあります。

幼い子どもに接する機会が少なく、育児に関する実体験が少ない、育児の知恵の伝達がされない状況、さらに、育児に対してつながりを感じる機会が持てない状況にあるため、育児への不安は増す傾向にあります。

また、専業主婦の母親は一人で24時間子どもと一緒にいることが多いため、子育てにおいて苛立ちや不安、自己実現への焦りなどを感じることが多いといわれています。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.3】
〜地域社会から孤立しがちな現代女性~

現代女性を取り巻く環境と問題点として「地域社会との関係の希薄化」も挙げられます。

「平成25年国民生活基本調査」では、「近所との付き合いの程度」の調査結果として、1975年には85%程度の方が「近所の方と付き合っている」と回答しています。
実際、1970年代頃には、東京の下町でも「田舎から野菜がたくさん送られてきたから」と近所のおばあさんが煮物を鍋に入れて持ってきてくれたり、旅行に出かけると近所にお土産を買ってくる、といった習慣がありました。

ところが、2000年になると「近所の方と付き合っている」と答えた方の割合は約50%となり、2007年には約40%までに低下しています。

特に都心部での子育ては、地域社会から孤立しがちになるので注意が必要です。
都心部では、マンション住まいが多いため、近所との付き合いが少なくなっている、といったことは、以前から言われてきたことです。しかし、それだけではありません。

近年では、近所の産院ではなく、大学病院や総合病院などでの出産が増え、妊娠から産後にかけてママ同士のつながりが築きにくい、という点も挙げられます。
また、情報、生活産業、移動・交通システムなどが発達していて、健康であれば他人とかかわりを持たずに生活することができるため、自分から積極的に地域社会に参加しなければ、簡単に孤立してしまうことがあるのです。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.4】
〜1990年代前半の「高齢出産」も、現代では第一子出生の平均年齢に〜

現代女性を取り巻く環境と問題点として「高齢出産の増加」も見逃せません。

1990年代前半までは、高齢出産といえば30歳でした。母子健康手帳の表紙に「マル高」のはんこが押される時代でした。
それが、2011年には第一子出生の平均年齢が30歳を超えました。この間、たった20年です。

この間に起きた変化は、なんといっても女性の社会進出でしょう。
1985年に男女雇用機会均等法が制定され、高等教育である大学の進学率も女性では50%、専門学校等も含めると70%を超えています。高校を卒業した後に就職するという女性が少なくなってきました。
しかし一口に「社会進出」といっても、「女性は昔、働いていなかったけれど時代が変わって働くようになった」というのは間違いです。正しく言うと、「産業構造の変化により、雇用労働者が増加した」に過ぎないのです。

女性の高学歴化、雇用労働者の増加により、2013年には日本人女性の平均初婚年齢は29.3歳、平均初産年齢は30.4歳へと変化してきました。
20代での出産が減少し、現在の基準で高齢出産とされる35歳以上の出産が3人に1人という時代を迎えている-それが現状なのです。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.5】
〜高齢出産に多い症状や傾向〜

1995年には、女性の第一子出生時の平均年齢は27.5歳でしたが、2013年には30.4歳となり、高齢出産の増加はデータを見ても明らかです。

高齢出産は、妊娠高血圧症候群などにかかりやすくなったり、分娩時間が20代に比べて長くなったり、帝王切開の割合が高くなります。
また、体力の回復に時間を要し、産褥期の慢性的な睡眠不足が母乳の分泌不足や育児不安を強める原因にもなります。

さらに、高齢出産をする方の中には高学歴の人が多く、物事を理屈で捉えることには慣れているものの、正解のない、直感や柔軟性を要する育児に戸惑いを覚える人が少なくない、という傾向があります。
また、祖父母が高齢で育児を十分にサポートできない状況にあり、頼る相手が近くにいないため孤立化しやすいなどの傾向も見られます。

高齢出産をされた方、特に産後ケアリスト自身より年上の産後ママにケアをする場合、教育・指導される、お世話されるということに抵抗感がある人もいるので、言葉遣いや身だしなみには特に注意が必要です。
また、「してもらった」ではなく、「自分で出来た」と思えるように、産後ママ自身に選択権を委ね、その家庭環境にあった方法に導くようにすることが大切です。

地域の中での役割分担と連携で、産後ママの心身を支える
―日本産後ケア協会が定義する「産後ケア」―

日本産後ケア協会が定義する「産後ケア」の一つとして、国や自治体、医療機関、育児支援団体、そして産後ケアリストなどによる地域の中での役割分担と連携により、産後ママの心身を支えることがあります。

母親、あるいは夫婦だけで子育てをするには、限界があります。
産後ケアリストも、夫婦、家庭だけで行う子育ての限界をサポートする役割の「一部」を果たすことができます。

しかし、クライアントである夫婦、あるいは家族と産後ケアリストだけでは、産後ママの様々なニーズに対して十分に応えることはできません。産後ケアリストだけでは解決できないこともあります。そのため、産後ケアリストが、何もかもを解決しようと一人で抱え込まないことが重要です。

とはいうものの、現在、産後ケアリストを目指される皆さんは、「仲間」や連携する人、組織をお持ちでない方がほとんどかと思います。一方、将来的に皆さんの仲間や連携する人、組織を自力で見つけてもらうのも、なかなか難しいかもしれません。

そのような現状ですが、ただ待っているだけではなく、第一歩を踏み出すことはできます。
たとえば、地域にはどのような協会があるのか、子育てサークルはあるのか、児童館ではどのような活動をしているのか、自治体の取り組み状況は…?など、まずは情報収集をしてみてください!

「産後」はいわゆる「産褥期」だけではありません
―より長期的に・多方面から産後ママをサポート―

2014年、厚生労働省は「地域における切れ目ない妊娠・出産支援の強化」として、妊娠・出産に関する正しい知識の普及から、産後の周辺環境や情報面のサポートまでを包括支援モデル事業として、女性に対する継続的ケアの充実を掲げました。

この厚生労働省の指針をもとに、日本産後ケア協会では、「産後」を、一般的な「産後」(助産学的に「産褥期」といわれる分娩後6~8週間)といわれる短い期間ではなく、より長期的にとらえ、産後ママを多方面からサポートすることをめざしています。

産後ケアの必要性を考えるとき、産後ママの悩みやニーズはある一定期間だけあるのではなく、産後の経過や環境によっても、また赤ちゃんの成長段階によっても、悩みの種類・質・深さも異なると考えるからです。

産後ママが一番不安な時期は「産後1ヶ月」

大阪府「地域母子保健サービスに関する研究~新しい乳幼児保健活動の標準方式の策定のための研究~」(平成15年)で、「今までに育児について一番心配だった時期」(子どもの出産後から3歳まで)を振り返って回答してもらった結果、出産して病院を退院してから1ヶ月までが一番心配で、一番手助けがほしい時期であることがわかりました。(詳しいデータは、「産後ケアリスト認定講座」の講義でご説明いたします)

日本では、産後1ヶ月は外出をすることも少なく、約6割の方が実家で過ごしているといわれています。
昔から「床上げ」まではゆっくりと過ごす、産後は養生することが推奨されていますので、実家でサポートを受けていることは十分に考えられるものの、それでもなお心配や手助けを求める人が少なくないというのが現状です。

つまり、産後1ヶ月という一番心配で不安な時期にサポートを受けるためには、妊娠中から準備をする必要がある、ということです。
産後ケアリストとして産後ママをサポートするためには、妊娠中からの関係作りも必要になってくるのです。

さらに、一番心配な時期を乗り越えた産後ママが、完全に心配ごとから開放されるわけではありません。産後ママの不安は、時期によって変わってくるのです。

育児の不安は赤ちゃんの成長によって刻々と変わる!

産後ママは「産後1ヶ月」が一番不安、というお話をしましたが、そこを過ぎれば万事OK!というわけではありません。育児に関する不安は、時期によって変わってくるのです。

たとえば赤ちゃんのこと。
1ヶ月までは泣き止まない、母乳が足りているか、体重が増加しているか、オムツかぶれや湿疹などの皮膚の状態に不安があるという方が多いようです。

1ヶ月から3ヶ月になると、母乳が足りているかという不安は引き続きあるものの、昼夜が逆転していることや便秘、またこの頃から始まる予防接種、といった、新たな不安が出てくるのです。

そして3ヶ月から6ヶ月になると、夜泣きのことや離乳食の開始時期について、といった新たな不安の種が出てきます。また、寝返りの時期など、発達に関する不安が出てくる時期でもあります。

半年を過ぎて1歳までは、離乳食の進め方や食が進まないことなどが不安になる方がいます。

このように、赤ちゃんの成長にあわせて、産後ママの育児に関する不安が変わってくるのです。

刻々と変わる、産後ママ自身が感じる「不安」

産後ママの不安は、育児に関することだけではありません。
出産を経て、産後ママ自身の心身の状態や周りの環境が変わることにより、産後ママ自身が感じる不安もあるのです。
そして、産後ママ自身が感じる不安は、やはり時とともに変わってくることを、産後ケアリストは理解しておく必要があります。

たとえば、産後ママの疲労や睡眠不足は、出産後1年くらいは慢性的に続くことになります。
その他、出産後から3ヶ月くらいにかけては、乳房のトラブルを心配事としてあげる方が多くなっています。
また、産後1ヶ月は無我夢中すぎて気づかないけれど、我に返ると家事の調整や家族との調整が心配になる方も少なくありません。これは半年ほど続きます。
外に出始める3ヶ月を過ぎると、育児サークルに関する心配事が出てきます。
半年を過ぎると、やはり卒乳について心配される方が増えてきます。

当然、心配事は産後ママそれぞれです。
ここで産後ケアリストにとって重要なポイントは、産後ママの心配事はある一定では決してなく、子供の成長とともに、心配事の種類も深さも刻々と変化していくこということです。
つまり、産後ママに次々に襲いかかる不安や心配な出来事を細かく把握し、どのようなサポートやサービスが必要なのか、など産後ママのニーズを正確につかむことが大切です。

では、産後ケアリストはどのような姿勢でサポートやサービスを提供すれば良いのでしょうか?

産後ケアの基本(1)
-適度な距離感を保ちつつ、産後ママの話を「聴く」―

産後ママが必要としている支援やサービスは様々です。
産後ケアの支援やサービスを考える際に重要なポイントは、自分の経験ではなく、産後ママの考え方、育ってきた環境、生活スタイルを尊重することです。

まずはしっかり話を聴くことからスタートします。
なんとなく、憶測、勝手なイメージではなく、関係作りをしながら、産後ママが大事にしていることは何か、これまでどのような生活をしてきたか―時には質問も交えながら聴きます。

このとき、プライベートかつデリケートな話を細かく伺うことになりますので、産後ママや家族のプライバシーを侵害せず、適度な距離を保つよう心がけることも忘れてはいけません。

どのように産後ママの考え方、生活スタイルを把握するのか、答えは一つではありませんが、適度な距離感を保ちつつ、きちんと「聴く」ことを通じて産後ママの特徴をつかみ、産後ママが望むケアを適切に提供する必要があるのです。

産後ケアの基本(2)
-産後ママを取り巻くご家族も支援する「意識」―

産後ケアリストの支援は、産後ママだけに必要なものではありません。
産後ママを取り巻く夫や上の子ども(きょうだい)、祖父母も含めて支援をする、という「意識」が必要です。
子育ての方法は、変化しています。一昔前の子育ての常識の中には、今の時代では積極的に行わないこと、医学的に否定的な考え方のものもあります。
デリケートな時期である産後ママが、実家のご両親と子育てについて意見が食い違うことがあるかもしれません。
その食い違いが原因で、産後ママが(時には家族も)ストレスを抱えていることもあります。

また、ご主人や上の子ども(きょうだい)に対する接し方をどうすれば良いのか、産後ママ自身が悩んでいるケースもありますし、ご主人や上の子ども(きょうだい)が産後ママにどのように接していいのかわからず、困っていることも考えられます。

クライアントはあくまでも依頼主である産後ママであることを忘れず、プライバシーを侵害しない範囲で情報収集をして、「産後ママを取り巻くご家族も一緒に支援する意識」を持って、必要なサポートをすることが最も重要なポイントとなります。

だから重要なのです!
―現代の産後ママが抱える不安に対処する「産後ケアリスト」―

産後ママのサポートのプロフェッショナル、産後ケアリスト。
一昔前までは耳なじみのない方がほとんどだったかと思いますが、近年、その必要性や重要性に注目が集まっています。
なぜ今、産後ケアリストが必要なのでしょうか。

分娩後の産後ママには、急激なホルモンの変化によるからだの変化、人間関係の変化が一気に起こります。同時に、初めての育児や母親としての役割に不安や焦りを覚え、様々な心理的・社会的ストレスに直面することになり、精神的に追い詰められてしまう人も少なくありません。

特に現在の日本では、核家族の増加や地域社会からの孤立により、子育てについて相談できる人が身近にいないなどの状況があります。
そのため、子育ては母親として重要な役割だと理解していても、様々な負担や不安、苛立ちを感じる母親が増えてきているのです。

産後ケアリストは、産後ママが家庭生活において体調を順調に回復できるように、生活のあり方やセルフケアの仕方、家族の協力体制などについて、具体的にアドバイスをしたり、悩みを解決する役割を担う専門家です。
産後ママが再就労を望む場合は、目的に向けて必要な心身の準備や社会的資源の情報提供、育児との両立に向けた生活へのアドバイスやサポートも行います。

つまり、産後ケアリストは、今の産後ママが抱える不安やストレスに対処するプロフェッショナルであり、その役割が注目されているのです。

産後ママがさらされる、短い期間での急激なホルモンの変化
-心の変化-

分娩後の産後ママは、様々な変化が一気に起こるため、様々な心理的・社会的ストレスに直面します。
大きな変化の1つは、急激なホルモンの変化による心身の変化です。
今日は、急激なホルモンの変化による「心」の変化について少し詳しくお話いたします。

女性の一生で、ホルモンの影響を受ける時期は大きく3つある、といわれています。
1つめは思春期。おおよそ10歳から18歳くらいの、いわゆる第二次性徴期です。
おおよそ8年くらいあり、子どもから大人へ心身ともに変化し、大人への第一歩を踏み出すときです。皆さんも経験されたと思いますが、反抗期でもありますね。

2つめは更年期。更年期は閉経の前後5年程度と定義されており、10年くらいあります。この時期も、心身ともに変化します。
不定愁訴といわれてしまう「更年期障害」や「空の巣症候群」などといわれるものも、この時期に起こりやすいとされています。
いずれも、8年から10年という年月をかけた変化です。

そして妊娠・出産・産褥期です。
妊娠期間は10ヶ月、出産は個人差がありますが、初産婦さんで半日程度、産褥期はおよそ6から8週間です。
この時期は、思春期や更年期に比べてかなり短く、この間に起きるホルモンの変化も劇的です。
たとえば、マタニティブルーズは30%から50%、産後うつは13%の女性が経験するといわれています。
一般成人のいわゆる「うつ病」は9%といわれていることを考えると、その割合より多いことがわかります。

産後ママがさらされる、様々な「からだ」の変化

分娩後の産後ママがさらされる、急激なホルモンの変化。
これは、産後ママの「心」だけでなく「からだ」にも大きな変化を与えます。
劇的なホルモンの変化によって、産後ママの体には大きく2つの変化があります。

女性の一生で、ホルモンの影響を受ける時期は大きく3つある、といわれています。
1つ目は、子宮が妊娠前に戻る変化です。これを子宮の退行性変化あるいは復古といいます。
2つ目は、乳房の変化です。妊娠中から少しずつ変化をして、産後は母乳をわが子にあげるためにさらに大きく、重くなっていきます。
この変化を、進行性変化ともいいます。

子宮を元に戻すためのホルモンと母乳を出すのは「オキシトシン」というホルモンです。
(そのため、子どもに母乳を飲んでもらうと子宮が小さくなる、ということになります)
そのため、これら2つはホルモンにより起こる変化といえます。

産後ママが直面する「からだ」の変化は、ホルモンによるものだけではありません。
全身の、いわゆるマイナートラブルにも見舞われます。
出産により産後ママの体は、頭から足まで、本当に全身ボロボロになっています。
母乳をあげている間は、栄養が母乳にとられるために、抜け毛が起こります。
また、肩こりや腰痛、赤ちゃんを抱っこすることによる腱鞘炎は、約半数の産後ママが経験しています。
尿漏れや便秘、痔なども30%程度の方に起こるといわれています。産後ママの3人に1人が経験する、といわれると、決して少なくない数字ですよね。

産後ママがさらされるのは、心身の変化だけではない
-新しい役割の獲得-

分娩後の産後ママは、急激なホルモンの変化により、「心」と「からだ」両方が、大きな変化にさらされます。さらに、出産によりボロボロになった体に起こる、様々なマイナートラブルにも悩まされます。

こうした心身の変化に加え、産後は「新しい役割を獲得する」という大きな変化も見逃せません。それまでの「妻」「嫁」という役割に加えて「母親」という役割を獲得しなければなりません。

同時に、夫婦だけの生活から、お子さんを迎えた生活へと、生活も大きく変化します。
特に、小さい子どもの世話をした経験のない方、それまで社会でバリバリ働いていた方などは、思い通りにならない赤ちゃんを目の前に「どうしてよいかわからない」と感じることは、想像に難くありません。

産後ママは、私たちの想像以上に心身や周りの環境の劇的な変化にさらされる-だからこそ、産後ケアリストが必要なのです。

とはいえ、一概に「産後ママがさらされる変化」といっても、人によって様々であることは皆さんもご承知の通りかと思います。
どのような要因が産後ママの変化の影響するのか、その要因は大きく3つに分けることができるとされています。

産後ママが精神的に不安定になりやすい、3つの要因

産後ママがさらされる、心身や環境などの大きな変化。
では、どのような要因が産後ママの変化の影響するのかというと、「母親自身の要因」「育児状況」「環境」の、大きく3つに分けることができます。

まず「母親自身の要因」とは、性格等、妊娠・出産の状況、健康状態などが挙げられます。
真面目で責任感が強い、几帳面、意思が弱い、意思決定ができないといった性格的な要因に加え、精神疾患の既往なども、産後ママの変化に大きな影響を与える要因となります。
また、望まない妊娠、出産体験を否定的に感じている、子どもの性別やイメージが期待はずれだった、といった「妊娠、出産の状況」も、分娩後の様々な変化に影響を与える一因です。
さらに、後陣痛、会陰切開部分の痛みや違和感、帝王切開後の痛み、疲れ、睡眠不足など、産後ママ自身の健康状態も、分娩後の様々な変化に影響する要因として見逃すことはできません。

次に「育児の状況」とは、授乳がうまくできない、夜泣きなどに加え、子どもの体重が増えない、黄疸、発疹・湿疹などの子どもの健康状態などが挙げられます。

最後に「環境」とは、夫や親からの協力不足、経済的困難、行政の産後ケア事業が整備されていないといった、家族の支援や社会環境が挙げられます。

これら3つの要因から、産後ママは精神的に不安定になりやすく、産後ママの心身の変化に影響を与えるとされているのです。

産後ママの様子、こんなときは注意して!

産後ママは、心身や環境の変化により大きな変化にさらされます。
さらに、母親自身の性格や健康状態、妊娠・出産の状況、育児が思うように進まない、家族や社会環境からの支援が十分でないなど、様々な要因により、産後ママが精神的に不安定になりやすいといわれています。

産後ケアリストとして、クライアントである産後ママに次のような様子が見られるときは、特に注意が必要です。

  • 表情が暗く、涙もろくなっている。
  • 悲観的な言動が多く、無気力で憂鬱になっている。
  • 常に緊張感や焦燥感がある。
  • 攻撃的な態度で周囲に敏感になりすぎている。
  • 不眠、食欲低下、頭痛、疲労感がある。
…など

このような産後ママに出会ったときには、ご本人と相談の上、医療や福祉の専門家につなぐ必要があります。
もし、産後ママ自身やご家族の方などが「ママは今、不安定な状況にあるかも?」と自覚した場合も、ぜひ産後ケアリストなどの専門家にご相談ください。

また、このような状況にならないように、産後ケアリストとしてサポートしていくことも重要です。

産後ママのサポートに専門家が必要な理由

最近では、行政や民間のヘルパー会社などが、産後ママへの家事支援サービスを行っています。
このような現状では、高齢者介護をメインにサービスを行っていた人が産後ママの家庭を訪れるケースもあります。
その際、産褥期に生じる心理的問題における知識不足のため、「がんばりなさい」「母親になったんでしょう」といった母親の負担になるような声かけをするなど、現場で混乱を招いているケースもあります。

また、産後ママ特有の様々な心身のマイナートラブルなどについて、医療の専門家である医師や助産師などに相談するほどでもないけれど、辛いことは辛いし、なんとなく心配…という思いを抱えている産後ママも少なくありません。
産後ママは、「気軽な相談窓口」のような存在を求めています。

産後ケアには、産後期における心理や社会的問題の実際を知り、それらを予防・改善するためのサポート方法を具体的に学ぶことにより、この問題の解決に結びつけることが必要です。
産後ケアリストは、こうした問題解決のための専門家として、産後ママの問題解決のパートナーとなって活躍しています。

産後ケアリストに必要なこと

妊娠・出産は、女性の人生にとって一大イベントです。
これまで「育てられる側」しか経験したことのない女性が、出産を境に「育てる側」へと移行します。
初めての経験の連続に、多くの産後ママが様々な不安を抱える時期でもあります。

また、夫や上の子などの家族にとっても戸惑いは生じます。
特に夫は、父性意識の芽生えや親としての役割意識に対して戸惑いを覚えるケースも多く見受けられます。

そのため、産後ケアリストは、新しい命を迎える家族の感情の変化などに細心の注意を払い、家族全体をサポートする姿勢が大切です。

産後ケアリストは、産後ケアに対する基本的な、幅広い専門知識、特に産後ママの心身の変化に対する知識の習得は不可欠です。
それらの知識とコミュニケーションスキルをもとに、産後ママに対して望んでいる支援・サービス・情報などを、適切な時期に提供することが必要とされています。

産後ケアリストの基本姿勢(1)
プライバシーとニーズの尊重

産後ケアリストには、支援やサービスを提供する際に忘れてはいけない「基本姿勢」があります。
一つは、産後ママのプライバシーとニーズを尊重する、ということです。

まず、プライバシーを尊重してケアを行うとは、どういうことなのか改めて確認しましょう。
たとえば、産後ママが話したことを、勝手に産後ママのご家族に話したり、産後ケアリスト自身の友人等に「こんな人がいてさ…」というように話してしまうことは、絶対にNGです。
当然ですが、産後ママの個人情報を産後ケアリスト以外の者に伝えることはしてはいけません。誤ってデータを紛失することも、あってはならないことです。
また、ご自宅に訪問した際に、許可なく部屋を覗いたり、物に触るなどもしてはいけません。
このようなことを無意識にしてしまわないように、産後ケアリストは常にプライバシーを意識することが重要です。

産後ケアリストの基本姿勢(2)
一貫して支持的で受容的な姿勢で接する

産後ケアリストの基本姿勢として、産後ママに対して一貫して支持的で受容的な姿勢で接することが求められています。

支持的とは、まず否定的な言葉を使用しないことが大切です。産後ママの訴えを、うなずきながら聴いてください。そして、価値判断をせず、産後ママの心身の存在を根底から支えること。ただし、これはその場の要求に全てこたえることではありません。

では受容的とはどういうことでしょうか。
まず、受容能力を上げるには、多様な価値観に触れる、受容経験、つまり許された経験を多く持つことです。他人を受容するには、自分を受容することが第一歩です。(疲れてストレスがたまっている時には、他の人を受容することは難しいですよね)
受容的な姿勢を具体的に言うと、たとえば産後ママの話に耳を傾ける、教えようとするのではなく、わかろうとする、産後ママの立場を想像して、その感情に思いを馳せてみる、言葉の裏・行間にある産後ママの本音・感情を汲み取る、といったことです。

もし、産後ママから「義理の母に言われる一言一言が気になる」「夫に『後で』といわれるとイラっとする」「実母にも子どもを預けたくない」「こんなに頑張っているのに…」「なんで私だけが…」といわれたら、どうしますか?
同じ言葉を聞いても、その背後にある本当の課題や問題を理解しなければ、適切なサポートはできません。言葉を素直に受け止めると同時に、この言葉に隠された気持ちはなんだろうか、と一呼吸おくことも大切です。

産後ケアリストの基本姿勢(3)
コミュニケーション能力、ホスピタリティ精神、考えを押し付けない

産後ケアリストの基本姿勢として、コミュニケーション能力やホスピタリティ精神を備えることが求められています。
産後ママの悩みやグチなどを、愛情を持って熱心に耳を傾けることの重要性を知り、時には産後ママが望むものを越えた、より質の高いサポートの提案やサービスの提供ができる資質を持つことが不可欠です。

最後に、個人的な考えを押し付けないことも、産後ケアリストの基本姿勢として重要です。
産後ケアリストをめざしている方の中には、ご自身が出産を経験し、子育てをされている方もいらっしゃるかと思います。
しかし、まずは産後ママであるクライアントのニーズや特徴をよく理解してください。
時には、ご自身とは異なる考え方を持っている方もいらっしゃるかもしれません。そのような時も、産後ケアリスト自身の個人的な経験に基づく意見や信念は表に出さないように注意しましょう。

産後ママの立場になってケアする。家族も含めて自分の家族と同じように思いやるなど、共感の姿勢を常に意識することも大切です。

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