ニッポンの産後ケア

ニッポンの産後ケア

産後ケアリスト認定講座の講義内容を抜粋してみなさまにお届けしている情報ページです。
日本産後ケア協会が考える「ニッポンの産後ケア」について、ぜひこの機会に触れてみてください。

Ⅰ.産後ケアと産後ケアリスト

地域の中での役割分担と連携で、産後ママの心身を支える
―日本産後ケア協会が定義する「産後ケア」―

日本産後ケア協会が定義する「産後ケア」の一つとして、国や自治体、医療機関、育児支援団体、そして産後ケアリストなどによる地域の中での役割分担と連携により、産後ママの心身を支えることがあります。

母親、あるいは夫婦だけで子育てをするには、限界があります。
産後ケアリストも、夫婦、家庭だけで行う子育ての限界をサポートする役割の「一部」を果たすことができます。

しかし、クライアントである夫婦、あるいは家族と産後ケアリストだけでは、産後ママの様々なニーズに対して十分に応えることはできません。産後ケアリストだけでは解決できないこともあります。そのため、産後ケアリストが、何もかもを解決しようと一人で抱え込まないことが重要です。

とはいうものの、現在、産後ケアリストを目指される皆さんは、「仲間」や連携する人、組織をお持ちでない方がほとんどかと思います。一方、将来的に皆さんの仲間や連携する人、組織を自力で見つけてもらうのも、なかなか難しいかもしれません。

そのような現状ですが、ただ待っているだけではなく、第一歩を踏み出すことはできます。
たとえば、地域にはどのような協会があるのか、子育てサークルはあるのか、児童館ではどのような活動をしているのか、自治体の取り組み状況は…?など、まずは情報収集をしてみてください!

「産後」はいわゆる「産褥期」だけではありません
―より長期的に・多方面から産後ママをサポート―

2014年、厚生労働省は「地域における切れ目ない妊娠・出産支援の強化」として、妊娠・出産に関する正しい知識の普及から、産後の周辺環境や情報面のサポートまでを包括支援モデル事業として、女性に対する継続的ケアの充実を掲げました。

この厚生労働省の指針をもとに、日本産後ケア協会では、「産後」を、一般的な「産後」(助産学的に「産褥期」といわれる分娩後6~8週間)といわれる短い期間ではなく、より長期的にとらえ、産後ママを多方面からサポートすることをめざしています。

産後ケアの必要性を考えるとき、産後ママの悩みやニーズはある一定期間だけあるのではなく、産後の経過や環境によっても、また赤ちゃんの成長段階によっても、悩みの種類・質・深さも異なると考えるからです。

産後ママが一番不安な時期は「産後1ヶ月」

大阪府「地域母子保健サービスに関する研究~新しい乳幼児保健活動の標準方式の策定のための研究~」(平成15年)で、「今までに育児について一番心配だった時期」(子どもの出産後から3歳まで)を振り返って回答してもらった結果、出産して病院を退院してから1ヶ月までが一番心配で、一番手助けがほしい時期であることがわかりました。(詳しいデータは、「産後ケアリスト認定講座」の講義でご説明いたします)

日本では、産後1ヶ月は外出をすることも少なく、約6割の方が実家で過ごしているといわれています。
昔から「床上げ」まではゆっくりと過ごす、産後は養生することが推奨されていますので、実家でサポートを受けていることは十分に考えられるものの、それでもなお心配や手助けを求める人が少なくないというのが現状です。

つまり、産後1ヶ月という一番心配で不安な時期にサポートを受けるためには、妊娠中から準備をする必要がある、ということです。
産後ケアリストとして産後ママをサポートするためには、妊娠中からの関係作りも必要になってくるのです。

さらに、一番心配な時期を乗り越えた産後ママが、完全に心配ごとから開放されるわけではありません。産後ママの不安は、時期によって変わってくるのです。

育児の不安は赤ちゃんの成長によって刻々と変わる!

産後ママは「産後1ヶ月」が一番不安、というお話をしましたが、そこを過ぎれば万事OK!というわけではありません。育児に関する不安は、時期によって変わってくるのです。

たとえば赤ちゃんのこと。
1ヶ月までは泣き止まない、母乳が足りているか、体重が増加しているか、オムツかぶれや湿疹などの皮膚の状態に不安があるという方が多いようです。

1ヶ月から3ヶ月になると、母乳が足りているかという不安は引き続きあるものの、昼夜が逆転していることや便秘、またこの頃から始まる予防接種、といった、新たな不安が出てくるのです。

そして3ヶ月から6ヶ月になると、夜泣きのことや離乳食の開始時期について、といった新たな不安の種が出てきます。また、寝返りの時期など、発達に関する不安が出てくる時期でもあります。

半年を過ぎて1歳までは、離乳食の進め方や食が進まないことなどが不安になる方がいます。

このように、赤ちゃんの成長にあわせて、産後ママの育児に関する不安が変わってくるのです。

刻々と変わる、産後ママ自身が感じる「不安」


産後ママの不安は、育児に関することだけではありません。
出産を経て、産後ママ自身の心身の状態や周りの環境が変わることにより、産後ママ自身が感じる不安もあるのです。
そして、産後ママ自身が感じる不安は、やはり時とともに変わってくることを、産後ケアリストは理解しておく必要があります。

たとえば、産後ママの疲労や睡眠不足は、出産後1年くらいは慢性的に続くことになります。
その他、出産後から3ヶ月くらいにかけては、乳房のトラブルを心配事としてあげる方が多くなっています。
また、産後1ヶ月は無我夢中すぎて気づかないけれど、我に返ると家事の調整や家族との調整が心配になる方も少なくありません。これは半年ほど続きます。
外に出始める3ヶ月を過ぎると、育児サークルに関する心配事が出てきます。
半年を過ぎると、やはり卒乳について心配される方が増えてきます。

当然、心配事は産後ママそれぞれです。
ここで産後ケアリストにとって重要なポイントは、産後ママの心配事はある一定では決してなく、子供の成長とともに、心配事の種類も深さも刻々と変化していくこということです。
つまり、産後ママに次々に襲いかかる不安や心配な出来事を細かく把握し、どのようなサポートやサービスが必要なのか、など産後ママのニーズを正確につかむことが大切です。

では、産後ケアリストはどのような姿勢でサポートやサービスを提供すれば良いのでしょうか?

産後ケアの基本(1)
-適度な距離感を保ちつつ、産後ママの話を「聴く」―

産後ママが必要としている支援やサービスは様々です。
産後ケアの支援やサービスを考える際に重要なポイントは、自分の経験ではなく、産後ママの考え方、育ってきた環境、生活スタイルを尊重することです。

まずはしっかり話を聴くことからスタートします。
なんとなく、憶測、勝手なイメージではなく、関係作りをしながら、産後ママが大事にしていることは何か、これまでどのような生活をしてきたか―時には質問も交えながら聴きます。

このとき、プライベートかつデリケートな話を細かく伺うことになりますので、産後ママや家族のプライバシーを侵害せず、適度な距離を保つよう心がけることも忘れてはいけません。

どのように産後ママの考え方、生活スタイルを把握するのか、答えは一つではありませんが、適度な距離感を保ちつつ、きちんと「聴く」ことを通じて産後ママの特徴をつかみ、産後ママが望むケアを適切に提供する必要があるのです。

産後ケアの基本(2)
-産後ママを取り巻くご家族も支援する「意識」―

産後ケアリストの支援は、産後ママだけに必要なものではありません。
産後ママを取り巻く夫や上の子ども(きょうだい)、祖父母も含めて支援をする、という「意識」が必要です。
子育ての方法は、変化しています。一昔前の子育ての常識の中には、今の時代では積極的に行わないこと、医学的に否定的な考え方のものもあります。
デリケートな時期である産後ママが、実家のご両親と子育てについて意見が食い違うことがあるかもしれません。
その食い違いが原因で、産後ママが(時には家族も)ストレスを抱えていることもあります。

また、ご主人や上の子ども(きょうだい)に対する接し方をどうすれば良いのか、産後ママ自身が悩んでいるケースもありますし、ご主人や上の子ども(きょうだい)が産後ママにどのように接していいのかわからず、困っていることも考えられます。

クライアントはあくまでも依頼主である産後ママであることを忘れず、プライバシーを侵害しない範囲で情報収集をして、「産後ママを取り巻くご家族も一緒に支援する意識」を持って、必要なサポートをすることが最も重要なポイントとなります。

だから重要なのです!
―現代の産後ママが抱える不安に対処する「産後ケアリスト」―

産後ママのサポートのプロフェッショナル、産後ケアリスト。
一昔前までは耳なじみのない方がほとんどだったかと思いますが、近年、その必要性や重要性に注目が集まっています。
なぜ今、産後ケアリストが必要なのでしょうか。

分娩後の産後ママには、急激なホルモンの変化によるからだの変化、人間関係の変化が一気に起こります。同時に、初めての育児や母親としての役割に不安や焦りを覚え、様々な心理的・社会的ストレスに直面することになり、精神的に追い詰められてしまう人も少なくありません。

特に現在の日本では、核家族の増加や地域社会からの孤立により、子育てについて相談できる人が身近にいないなどの状況があります。
そのため、子育ては母親として重要な役割だと理解していても、様々な負担や不安、苛立ちを感じる母親が増えてきているのです。

産後ケアリストは、産後ママが家庭生活において体調を順調に回復できるように、生活のあり方やセルフケアの仕方、家族の協力体制などについて、具体的にアドバイスをしたり、悩みを解決する役割を担う専門家です。
産後ママが再就労を望む場合は、目的に向けて必要な心身の準備や社会的資源の情報提供、育児との両立に向けた生活へのアドバイスやサポートも行います。

つまり、産後ケアリストは、今の産後ママが抱える不安やストレスに対処するプロフェッショナルであり、その役割が注目されているのです。

産後ママがさらされる、短い期間での急激なホルモンの変化
-心の変化-

分娩後の産後ママは、様々な変化が一気に起こるため、様々な心理的・社会的ストレスに直面します。
大きな変化の1つは、急激なホルモンの変化による心身の変化です。
今日は、急激なホルモンの変化による「心」の変化について少し詳しくお話いたします。

女性の一生で、ホルモンの影響を受ける時期は大きく3つある、といわれています。
1つめは思春期。おおよそ10歳から18歳くらいの、いわゆる第二次性徴期です。
おおよそ8年くらいあり、子どもから大人へ心身ともに変化し、大人への第一歩を踏み出すときです。皆さんも経験されたと思いますが、反抗期でもありますね。

2つめは更年期。更年期は閉経の前後5年程度と定義されており、10年くらいあります。この時期も、心身ともに変化します。
不定愁訴といわれてしまう「更年期障害」や「空の巣症候群」などといわれるものも、この時期に起こりやすいとされています。
いずれも、8年から10年という年月をかけた変化です。

そして妊娠・出産・産褥期です。
妊娠期間は10ヶ月、出産は個人差がありますが、初産婦さんで半日程度、産褥期はおよそ6から8週間です。
この時期は、思春期や更年期に比べてかなり短く、この間に起きるホルモンの変化も劇的です。
たとえば、マタニティブルーズは30%から50%、産後うつは13%の女性が経験するといわれています。
一般成人のいわゆる「うつ病」は9%といわれていることを考えると、その割合より多いことがわかります。

産後ママがさらされる、様々な「からだ」の変化

分娩後の産後ママがさらされる、急激なホルモンの変化。
これは、産後ママの「心」だけでなく「からだ」にも大きな変化を与えます。
劇的なホルモンの変化によって、産後ママの体には大きく2つの変化があります。

女性の一生で、ホルモンの影響を受ける時期は大きく3つある、といわれています。
1つ目は、子宮が妊娠前に戻る変化です。これを子宮の退行性変化あるいは復古といいます。
2つ目は、乳房の変化です。妊娠中から少しずつ変化をして、産後は母乳をわが子にあげるためにさらに大きく、重くなっていきます。
この変化を、進行性変化ともいいます。

子宮を元に戻すためのホルモンと母乳を出すのは「オキシトシン」というホルモンです。
(そのため、子どもに母乳を飲んでもらうと子宮が小さくなる、ということになります)
そのため、これら2つはホルモンにより起こる変化といえます。

産後ママが直面する「からだ」の変化は、ホルモンによるものだけではありません。
全身の、いわゆるマイナートラブルにも見舞われます。
出産により産後ママの体は、頭から足まで、本当に全身ボロボロになっています。
母乳をあげている間は、栄養が母乳にとられるために、抜け毛が起こります。
また、肩こりや腰痛、赤ちゃんを抱っこすることによる腱鞘炎は、約半数の産後ママが経験しています。
尿漏れや便秘、痔なども30%程度の方に起こるといわれています。産後ママの3人に1人が経験する、といわれると、決して少なくない数字ですよね。

産後ママがさらされるのは、心身の変化だけではない
-新しい役割の獲得-

分娩後の産後ママは、急激なホルモンの変化により、「心」と「からだ」両方が、大きな変化にさらされます。さらに、出産によりボロボロになった体に起こる、様々なマイナートラブルにも悩まされます。

こうした心身の変化に加え、産後は「新しい役割を獲得する」という大きな変化も見逃せません。それまでの「妻」「嫁」という役割に加えて「母親」という役割を獲得しなければなりません。

同時に、夫婦だけの生活から、お子さんを迎えた生活へと、生活も大きく変化します。
特に、小さい子どもの世話をした経験のない方、それまで社会でバリバリ働いていた方などは、思い通りにならない赤ちゃんを目の前に「どうしてよいかわからない」と感じることは、想像に難くありません。

産後ママは、私たちの想像以上に心身や周りの環境の劇的な変化にさらされる-だからこそ、産後ケアリストが必要なのです。

とはいえ、一概に「産後ママがさらされる変化」といっても、人によって様々であることは皆さんもご承知の通りかと思います。
どのような要因が産後ママの変化の影響するのか、その要因は大きく3つに分けることができるとされています。

産後ママが精神的に不安定になりやすい、3つの要因

産後ママがさらされる、心身や環境などの大きな変化。
では、どのような要因が産後ママの変化の影響するのかというと、「母親自身の要因」「育児状況」「環境」の、大きく3つに分けることができます。

まず「母親自身の要因」とは、性格等、妊娠・出産の状況、健康状態などが挙げられます。
真面目で責任感が強い、几帳面、意思が弱い、意思決定ができないといった性格的な要因に加え、精神疾患の既往なども、産後ママの変化に大きな影響を与える要因となります。
また、望まない妊娠、出産体験を否定的に感じている、子どもの性別やイメージが期待はずれだった、といった「妊娠、出産の状況」も、分娩後の様々な変化に影響を与える一因です。
さらに、後陣痛、会陰切開部分の痛みや違和感、帝王切開後の痛み、疲れ、睡眠不足など、産後ママ自身の健康状態も、分娩後の様々な変化に影響する要因として見逃すことはできません。

次に「育児の状況」とは、授乳がうまくできない、夜泣きなどに加え、子どもの体重が増えない、黄疸、発疹・湿疹などの子どもの健康状態などが挙げられます。

最後に「環境」とは、夫や親からの協力不足、経済的困難、行政の産後ケア事業が整備されていないといった、家族の支援や社会環境が挙げられます。

これら3つの要因から、産後ママは精神的に不安定になりやすく、産後ママの心身の変化に影響を与えるとされているのです。

産後ママの様子、こんなときは注意して!

産後ママは、心身や環境の変化により大きな変化にさらされます。
さらに、母親自身の性格や健康状態、妊娠・出産の状況、育児が思うように進まない、家族や社会環境からの支援が十分でないなど、様々な要因により、産後ママが精神的に不安定になりやすいといわれています。

産後ケアリストとして、クライアントである産後ママに次のような様子が見られるときは、特に注意が必要です。
・表情が暗く、涙もろくなっている。
・悲観的な言動が多く、無気力で憂鬱になっている。
・常に緊張感や焦燥感がある。
・攻撃的な態度で周囲に敏感になりすぎている。
・不眠、食欲低下、頭痛、疲労感がある。
…など
このような産後ママに出会ったときには、ご本人と相談の上、医療や福祉の専門家につなぐ必要があります。
もし、産後ママ自身やご家族の方などが「ママは今、不安定な状況にあるかも?」と自覚した場合も、ぜひ産後ケアリストなどの専門家にご相談ください。

また、このような状況にならないように、産後ケアリストとしてサポートしていくことも重要です。

産後ママのサポートに専門家が必要な理由

最近では、行政や民間のヘルパー会社などが、産後ママへの家事支援サービスを行っています。
このような現状では、高齢者介護をメインにサービスを行っていた人が産後ママの家庭を訪れるケースもあります。
その際、産褥期に生じる心理的問題における知識不足のため、「がんばりなさい」「母親になったんでしょう」といった母親の負担になるような声かけをするなど、現場で混乱を招いているケースもあります。

また、産後ママ特有の様々な心身のマイナートラブルなどについて、医療の専門家である医師や助産師などに相談するほどでもないけれど、辛いことは辛いし、なんとなく心配…という思いを抱えている産後ママも少なくありません。
産後ママは、「気軽な相談窓口」のような存在を求めています。

産後ケアには、産後期における心理や社会的問題の実際を知り、それらを予防・改善するためのサポート方法を具体的に学ぶことにより、この問題の解決に結びつけることが必要です。
産後ケアリストは、こうした問題解決のための専門家として、産後ママの問題解決のパートナーとなって活躍しています。

産後ケアリストに必要なこと

妊娠・出産は、女性の人生にとって一大イベントです。
これまで「育てられる側」しか経験したことのない女性が、出産を境に「育てる側」へと移行します。
初めての経験の連続に、多くの産後ママが様々な不安を抱える時期でもあります。

また、夫や上の子などの家族にとっても戸惑いは生じます。
特に夫は、父性意識の芽生えや親としての役割意識に対して戸惑いを覚えるケースも多く見受けられます。

そのため、産後ケアリストは、新しい命を迎える家族の感情の変化などに細心の注意を払い、家族全体をサポートする姿勢が大切です。

産後ケアリストは、産後ケアに対する基本的な、幅広い専門知識、特に産後ママの心身の変化に対する知識の習得は不可欠です。
それらの知識とコミュニケーションスキルをもとに、産後ママに対して望んでいる支援・サービス・情報などを、適切な時期に提供することが必要とされています。

産後ケアリストの基本姿勢(1)
プライバシーとニーズの尊重

産後ケアリストには、支援やサービスを提供する際に忘れてはいけない「基本姿勢」があります。
一つは、産後ママのプライバシーとニーズを尊重する、ということです。

まず、プライバシーを尊重してケアを行うとは、どういうことなのか改めて確認しましょう。
たとえば、産後ママが話したことを、勝手に産後ママのご家族に話したり、産後ケアリスト自身の友人等に「こんな人がいてさ…」というように話してしまうことは、絶対にNGです。
当然ですが、産後ママの個人情報を産後ケアリスト以外の者に伝えることはしてはいけません。誤ってデータを紛失することも、あってはならないことです。
また、ご自宅に訪問した際に、許可なく部屋を覗いたり、物に触るなどもしてはいけません。
このようなことを無意識にしてしまわないように、産後ケアリストは常にプライバシーを意識することが重要です。

産後ケアリストの基本姿勢(2)
一貫して支持的で受容的な姿勢で接する

産後ケアリストの基本姿勢として、産後ママに対して一貫して支持的で受容的な姿勢で接することが求められています。

支持的とは、まず否定的な言葉を使用しないことが大切です。産後ママの訴えを、うなずきながら聴いてください。そして、価値判断をせず、産後ママの心身の存在を根底から支えること。ただし、これはその場の要求に全てこたえることではありません。

では受容的とはどういうことでしょうか。
まず、受容能力を上げるには、多様な価値観に触れる、受容経験、つまり許された経験を多く持つことです。他人を受容するには、自分を受容することが第一歩です。(疲れてストレスがたまっている時には、他の人を受容することは難しいですよね)
受容的な姿勢を具体的に言うと、たとえば産後ママの話に耳を傾ける、教えようとするのではなく、わかろうとする、産後ママの立場を想像して、その感情に思いを馳せてみる、言葉の裏・行間にある産後ママの本音・感情を汲み取る、といったことです。

もし、産後ママから「義理の母に言われる一言一言が気になる」「夫に『後で』といわれるとイラっとする」「実母にも子どもを預けたくない」「こんなに頑張っているのに…」「なんで私だけが…」といわれたら、どうしますか?
同じ言葉を聞いても、その背後にある本当の課題や問題を理解しなければ、適切なサポートはできません。言葉を素直に受け止めると同時に、この言葉に隠された気持ちはなんだろうか、と一呼吸おくことも大切です。

産後ケアリストの基本姿勢(3)
コミュニケーション能力、ホスピタリティ精神、考えを押し付けない

産後ケアリストの基本姿勢として、コミュニケーション能力やホスピタリティ精神を備えることが求められています。
産後ママの悩みやグチなどを、愛情を持って熱心に耳を傾けることの重要性を知り、時には産後ママが望むものを越えた、より質の高いサポートの提案やサービスの提供ができる資質を持つことが不可欠です。

最後に、個人的な考えを押し付けないことも、産後ケアリストの基本姿勢として重要です。
産後ケアリストをめざしている方の中には、ご自身が出産を経験し、子育てをされている方もいらっしゃるかと思います。
しかし、まずは産後ママであるクライアントのニーズや特徴をよく理解してください。
時には、ご自身とは異なる考え方を持っている方もいらっしゃるかもしれません。そのような時も、産後ケアリスト自身の個人的な経験に基づく意見や信念は表に出さないように注意しましょう。

産後ママの立場になってケアする。家族も含めて自分の家族と同じように思いやるなど、共感の姿勢を常に意識することも大切です。

Ⅱ.産後ケアリストの必要性と活躍の場

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.1】
~現代女性を取り巻く環境と問題点-子育てへの負担感を強くするママたち~

高齢出産の増加、家事と仕事の両立など―母親となる現代女性の傾向を知ることは、産後ケアリスト®に求められていることは何か、を探る上で非常に重要なポイントです。
ここからは、現代女性を取り巻く環境と問題点について、少しお話ししていきましょう。

近年の女性の社会進出はめざましいものがありますが、「結婚・出産により家庭に入り育児に専念するのが女性の役割」と旧来どおりに位置づけられることはまだまだ少なくありません。
また、核家族化や地域社会の互助機能の低下などを背景に、育児に慣れない出産直後の母親たちが孤立しがちになるとともに、抱える問題も多様化しています。

その結果、育児の不安と一人で戦いながら「自由な時間が持てない」「体が疲れる」「気が休まらない」といった子育てへの負担感を強くする母親が増えてきています。
実際に新米ママに聞いた出産後の悩みをピックアップしてみると、「一人でいるのが不安」「子育てそのものに漠然とした不安がある」「子育てについて相談できる相手がいない」「協力者(夫・両親)との価値観の違い」などを挙げる人が増えているのです。
また、これまでの「出産後は数日の入院を経てすぐに自宅へ戻る」といった出産後の動きも、産後ママの育児の不安や子育てへの負担感を強める一因になっているかもしれません。

たとえば、出産し、病院を退院した後、産後ケアセンターで体力の回復と育児の不安をゆっくりと解消していき、穏やかで健やかな心身で自宅に戻ることや、育児中に心身を休ませたいときには産後ケアセンターに行き、産後ケアリスト®のサポートを受けて自宅に戻るなど、産後ケアを上手く取り入れることによって、現代の産後ママが抱える育児の不安や子育てへの負担感を和らげることができるかもしれませんね。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.2】
~核家族の増加-「昔は三世代家族が当たり前」は誤解~

現代女性を取り巻く環境と問題点について、もう少し細かくお話しいたします。
まず、一つめの課題は、核家族の増加です。

誤解されやすいのですが、「昔は三世代家族が当たり前」というのは少し違います。きょうだいが多い時代は、長男以外は家族がそれぞれ独立するからです。
では、何が当たり前だったのかというと、「きょうだいが4人以上は当たり前」の時代は、「親族は近くに住居を構えることが当たり前」でした。そのため、親族による子育て、介護を含む互助が成り立っていました。

しかし、1970年代以降、都市化が進むことで、実家あるいは親族が近くにいない環境での核家族が増加しました。現在、1980年代生まれが子育てをする世代になっています。
つまり、都市部の核家族で育った世代の女性が出産する年齢になっているのです。

さらに、子どものいる世帯は少子化の影響で減少しているにもかかわらず、子どもがいる世帯に占める核家族世帯は増加傾向にあります。

幼い子どもに接する機会が少なく、育児に関する実体験が少ない、育児の知恵の伝達がされない状況、さらに、育児に対してつながりを感じる機会が持てない状況にあるため、育児への不安は増す傾向にあります。

また、専業主婦の母親は一人で24時間子どもと一緒にいることが多いため、子育てにおいて苛立ちや不安、自己実現への焦りなどを感じることが多いといわれています。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.3】
〜地域社会から孤立しがちな現代女性~

現代女性を取り巻く環境と問題点として「地域社会との関係の希薄化」も挙げられます。

「平成25年国民生活基本調査」では、「近所との付き合いの程度」の調査結果として、1975年には85%程度の方が「近所の方と付き合っている」と回答しています。
実際、1970年代頃には、東京の下町でも「田舎から野菜がたくさん送られてきたから」と近所のおばあさんが煮物を鍋に入れて持ってきてくれたり、旅行に出かけると近所にお土産を買ってくる、といった習慣がありました。

ところが、2000年になると「近所の方と付き合っている」と答えた方の割合は約50%となり、2007年には約40%までに低下しています。

特に都心部での子育ては、地域社会から孤立しがちになるので注意が必要です。
都心部では、マンション住まいが多いため、近所との付き合いが少なくなっている、といったことは、以前から言われてきたことです。しかし、それだけではありません。

近年では、近所の産院ではなく、大学病院や総合病院などでの出産が増え、妊娠から産後にかけてママ同士のつながりが築きにくい、という点も挙げられます。
また、情報、生活産業、移動・交通システムなどが発達していて、健康であれば他人とかかわりを持たずに生活することができるため、自分から積極的に地域社会に参加しなければ、簡単に孤立してしまうことがあるのです。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.4】
〜1990年代前半の「高齢出産」も、現代では第一子出生の平均年齢に〜

現代女性を取り巻く環境と問題点として「高齢出産の増加」も見逃せません。

1990年代前半までは、高齢出産といえば30歳でした。母子健康手帳の表紙に「マル高」のはんこが押される時代でした。
それが、2011年には第一子出生の平均年齢が30歳を超えました。この間、たった20年です。

この間に起きた変化は、なんといっても女性の社会進出でしょう。
1985年に男女雇用機会均等法が制定され、高等教育である大学の進学率も女性では50%、専門学校等も含めると70%を超えています。高校を卒業した後に就職するという女性が少なくなってきました。
しかし一口に「社会進出」といっても、「女性は昔、働いていなかったけれど時代が変わって働くようになった」というのは間違いです。正しく言うと、「産業構造の変化により、雇用労働者が増加した」に過ぎないのです。

女性の高学歴化、雇用労働者の増加により、2013年には日本人女性の平均初婚年齢は29.3歳、平均初産年齢は30.4歳へと変化してきました。
20代での出産が減少し、現在の基準で高齢出産とされる35歳以上の出産が3人に1人という時代を迎えている-それが現状なのです。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.5】
〜高齢出産に多い症状や傾向〜

1995年には、女性の第一子出生時の平均年齢は27.5歳でしたが、2013年には30.4歳となり、高齢出産の増加はデータを見ても明らかです。

高齢出産は、妊娠高血圧症候群などにかかりやすくなったり、分娩時間が20代に比べて長くなったり、帝王切開の割合が高くなります。
また、体力の回復に時間を要し、産褥期の慢性的な睡眠不足が母乳の分泌不足や育児不安を強める原因にもなります。

さらに、高齢出産をする方の中には高学歴の人が多く、物事を理屈で捉えることには慣れているものの、正解のない、直感や柔軟性を要する育児に戸惑いを覚える人が少なくない、という傾向があります。
また、祖父母が高齢で育児を十分にサポートできない状況にあり、頼る相手が近くにいないため孤立化しやすいなどの傾向も見られます。

高齢出産をされた方、特に産後ケアリスト自身より年上の産後ママにケアをする場合、教育・指導される、お世話されるということに抵抗感がある人もいるので、言葉遣いや身だしなみには特に注意が必要です。
また、「してもらった」ではなく、「自分で出来た」と思えるように、産後ママ自身に選択権を委ね、その家庭環境にあった方法に導くようにすることが大切です。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.6】
〜育児と仕事の両立を選ぶ女性の増加〜

以前にも触れたとおり、就業率の上昇、特に会社に雇用された労働者が増加しています。
女性も、育児と仕事の両立を選ぶ人が増加しています。

15歳から64歳の女性の就業率は、2013年4月に62.5%となり、過去最高を更新しました。
総務省統計局の就業構造基本調査によると、育児をしている女性のうち、有職者の割合は52.3%(2012年時点)となっています。
また、子どもの年齢が高くなるにつれ、働く母親が増加傾向にあります。
末っ子が小学校1年生になると、約70%の母親が働いています。

仕事を続けたいと意欲的に希望する女性がいる一方で、所得の減少により、仕事を続けざるを得ない人も増えています。
仕事中から保育園入園時期や仕事復帰時期を検討し、入所できる保育施設を探さなければいけない状況に悩んでいる母親は少なくありません。
一昔前に比べて、会社に雇用される母親が増えていることが原因の一つである、といえるでしょう。

近年、子育てをめぐる社会問題として報道などでも取り上げられることの多い問題ですので、このような問題があることは多くの方がご存知でもあり、また様々な意見をお持ちのことだと思います。
産後ケアリストは、こうした問題に対して、自分の経験や思い込みで、母親に対して「こうするべき」と意見を押し付けることのないよう、十分に注意する必要があります。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.7】
〜不妊治療及び体外受精の増加〜

近年、不妊治療経験を持つ夫婦が増え続けています。2016年のデータによると、出生する子どもの21人に1人が体外受精により出生しているといわれています。
子どものいない夫婦では、不妊を心配したことがある、あるいは現在心配している方の割合が5割を超えます。

厚生労働省第14回出生動向基本調査(2010年)によると、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある、または受けている夫婦は全体の16.4%、子どものいない夫婦では28.6%に及ぶとされています。
不妊治療では大半の人が回数を重ねることとなり、治療費の負担や妊娠できないことへの焦りなど、精神的負担が大きくなる傾向があります。
また、妊娠に至ったとしても、高齢な人ほど流産の確率が高くなります。
現在、様々なリスクや精神的・肉体的プレッシャーを乗り越えて妊娠、出産した母親が増えていることは、産後ケアリストとして知っておくべきトピックスの一つです。

ケアのポイントは、不妊治療をして生んだ母親は、出産がゴールになっている方が少なからずいます。一方で、育児も頑張りすぎて追い詰められてしまう方も少なくありません。
いずれにしても「こんなはずではなかった」と、理想と現実のギャップに育児を否定的に捉えるような傾向が見られがちです。
最悪の場合、育児放棄や虐待にも繋がる危険性があるため、注意が必要です。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.8】
〜ひとり親家庭の増加〜

現代女性を取り巻く環境と問題点の一つ、ひとり親家庭の増加について、今回は母子家庭にフォーカスしてお話しいたします。

母子のみにより構成される母子世帯は、2010年で約76万世帯となり、10年間で約20万世帯増加しています。
日本では、非嫡出子の出生は2%ですから、母子家庭の増加は、離婚が原因です。
1993年時点で、母子世帯になったときの末子の年齢を見ると、「0歳から2歳」が全体の3.8%、「3から5歳」を合わせても約15%でした。

しかし、2011年になると、母子家庭になったときの末子の年齢で一番多いのが「0から2歳」で、全体の約3割にのぼります。次に多い「3から5歳」が約2割で、合計すると半数以上の人が幼児期のうちに離婚したことがわかります。

データを見ると、近年は、子育てをするために「夫が役に立たない」と感じると、早い段階で夫に三行半を突きつけている、という一面を垣間見ることができるのではないでしょうか。同時に、幼い子どもを抱えてひとり親になる母親が増えていることも見逃せません。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.9】
〜ひとり親家庭の現状と産後ケアのポイント〜

母子世帯の数は2010年で約76万世帯となり、10年間で約20万世帯も増えたこと、そして多くの母子世帯では子どもが幼児期のうちに両親の離婚を経験していることがデータから明らかになっています。

平成23年度全国母子世帯等調査によると、母子家庭の母親の約5割は契約社員や派遣社員、自営業、パート・アルバイトといった非正規雇用者で、平均年間収入は父子世帯で約360万円なのに対して母子家庭では約181万円となっており、育児、養育費、就労などの支援が必要な家庭が増えています。

身近に頼れる自分の両親などがなければ、母子家庭の母親は、育児や家事、仕事のすべてを自分ひとりでやらなくてはいけなくなるため、今後、こうした家庭に対する国の優先的な産後サポートや支援対策が求められます。

母子家庭の母親の産後ケアポイントとして、行政サービスを把握しておくことは必要不可欠です。
行政サービスは、子育て短期支援事業(ショートステイ、トワイライトステイ)や、ひとり親家庭生活支援事業(ホームフレンドの派遣など)、母子家庭等日常生活支援事業などがあります。どのような産後ケア事業を行っているかは自治体によって異なりますので、各自治体の支援事業を個別に把握しておくようにしましょう。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.10】
〜DV(ドメスティック・バイオレンス)被害と産後ケアのポイント〜

産後ケアリストがケアしている産後ママが、DV(ドメスティック・バイオレンス。以下「DV」といいます)の被害にあっていることに気づくケースもあります。
現在、DV被害者の多くは女性で、DVの相談件数は年々増加しています。

DVとは、同居関係にある配偶者や内縁関係の間で起こる家庭内暴力のことで、近年では婚姻の有無を問わず、元夫婦や恋人など近親者間に起こる暴力全般を指す場合もあります。
日本では、古くからの家族感や、司法機関の介入により関係が破綻することへの危惧、犯罪性の認識の欠如などから、従来、「近親者からの暴力」について刑事介入がなされることは稀でした。
しかし、2001年10月から「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(いわゆる「DV防止法」)が施行され、人々の意識が少しずつ変化していくことが期待されています。

DVは、「身体的暴力」に加え、「経済的暴力」「社会的隔離」「性的暴力」「精神的暴力」があります。
「身体的暴力」(虐待)は、物理的な暴力行為をすることだけでなく、必要な冷暖房や衣服を差し控える、必要な医療を差し控えるなども含まれます。
「経済的暴力」は、生活費を与えない又は著しく制限する、無計画な買い物や借金を繰り返す、仕事を制限するなどをいいます。
「社会的隔離」は、電話や手紙の相手や頻度を制限する、外出を制限するなどが挙げられます。
「性的暴力」(虐待)は、性交を差し控えるあるいは逆に強要する、といったことだけでなく、過度な嫉妬も含まれます。
「精神的暴力」(虐待)は、終始行動を監視する、電話やメールなどの通信履歴をチェックする、他人の前で欠点をあげつらう、無視する、出て行けと脅すなどがあります。

産後ケアリストとしては、DVに関心を持つこと、暴力は許されない行為であることを「常識」とするのが大前提です。
その上で、ケアのポイントとして、DVを発見した場合は、まず被害者に相談窓口(人権相談所、人権ホットラインなど)の情報を提供するように努めます。ご本人の同意を得て、警察又は配偶者暴力相談支援センターに通報することも有効です。

また、DVを受けている方の中には「自分が悪い」と思っている方も少なくありません。「我慢が足りないのよ」「あなたにも原因があるのでは?」といった言葉がけはせず、「あなたは悪くない」と声をかけることも重要です。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.11】
〜増える児童虐待の現実〜

母親等がDV被害にあうことに加え、子どもがその被害にある児童虐待も大きな社会問題の一つです。子育ての不安感やストレスの蓄積から、母親の心身が不安定になり、虐待にまで発展してしまうケースが多く見受けられます。

厚生労働省のデータによると、児童相談所での児童虐待相談対応件数は1999年には約1万1千件だったのに対して、2013年には約7万3千件と6倍以上に増えており、2015年には10万件を突破しています。
相談内容は、身体的虐待が35.3%と最も多く、次いで心理的虐待が33.6%、ネグレクト(28.9%)、性的虐待(2.2%)の順になっています。近年では身体的虐待やネグレクトの割合が低下し、心理的虐待の割合が上昇しています。
また、虐待による死亡は、10年前と比べて2倍に増加しているといいます。

被虐待児の年齢は3歳未満が19.2%、3歳から学齢前が24.0%と、学齢前の子どもが4割以上を占めており、虐待は子どもが幼い頃から行なわれるケースも少なくありません。

主たる虐待者で最も多いのは実母で57.3%、次いで実父(29%)となっており、母親による児童虐待が多いことも見逃せません。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.12】
〜児童虐待、3つの要因〜

近年増加傾向にあり、大きな社会問題として取り上げられることも増えてきた「児童虐待」。
ではなぜ、児童虐待が起きるのでしょうか?

その要因は大きく3つある、といわれています。親の要因、子どもの要因、そして養育環境要因です。

親の要因には、妊娠、出産、育児を通して発生するもの、保護者自身の性格あるいは精神疾患などの心身の不健康から発生するものがあります。
望まない妊娠で妊娠そのものを受け入れられない/生まれた子どもに愛情を持てない/保護者が未熟で、育児不安やストレスが蓄積しやすい/マタニティブルー、産後うつ病、精神障害、知的障害、慢性疾患、アルコール依存、薬物依存等により心身が不安定になりやすい/保護者自身が虐待経験を持っている/攻撃的、あるいは衝動的な性格…などがあります。

子どもの要因として、子どもの側に何らかの育てにくさがある場合などが考えられます。
たとえば、「手のかかる子ども」と母親が認識しやすいのが、よく泣く子どもです。
また、未熟児、障がい児など出生後に母子分離を経験している場合も母子相互作用の確立が難しく、虐待の要因となることがあります。

養育環境の要因には、複雑で不安定な家庭環境や家族関係、夫婦関係、社会的孤立や経済的な不安、母子の健康保持・増進に努めないことなどがあります。
具体的には、家族や同居人、住む場所が変わるなど、生活環境が安定しない/家庭内で夫婦の不和やDVが起こっている/親戚や地域と関わりを持たず、孤立している/失業、または仕事が安定していないなどで、経済的に行き詰っている/母子ともに必要な定期健診を受けていない…などがあります。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.13】
〜子どもからの虐待のサインを見逃すな!〜

「児童虐待」は近年増加傾向にあり、産後ケアの現場でも遭遇することがあります。
産後ケアリストは、虐待のサインを見逃してはいけません。虐待のサインを見逃さないためには、子どもや親の様子を注意して観察することが重要です。

まず、子どもからのサインは、どのような形で現れるのでしょうか?

外傷や病気・多数の打アザや傷がある(特に、こめかみ、目、首、うで、腹部、背中、腿(もも)などケガをしにくい場所に外傷を負っていることがある)/アイロンやたばこが原因と思われる火傷をしている/ケガが繰り返し起こる
などが見られた場合は、注意が必要です。

また、明らかな発育や発達の遅れも虐待のサインの一つである場合があります。
病気以外で低身長や低体重など身体的発達面での遅れが見られる場合、十分な食事や栄養が与えられないことが原因である場合があるからです。
虐待のストレスが、成長ホルモンの分泌に影響を与えることもあります。
親との関わりがないために、言葉などの知的発達に遅れが出る、外で遊ぶことが極端に少なく歩行機能が不十分というケースもあります。

その他、子どもの不自然な様子も注意して観察する必要があります。
たとえば、服や体が清潔でない、着替えや入浴がほとんどされていないなどは代表的な一例です。
また、着替えを嫌がるなど、衣服を脱ぐことに異常な不安を見せる/表情や反応が乏しい、無気力/給食の残り物など食べ物に固執する/親に対して怯えた態度をとる/帰宅を嫌がる/体に触れようとすると身構えたり、嫌がる/大人の動きをじっと目で追うなど、警戒心が強い/自分より弱い子に威圧的な態度を取ったり、暴力を振るう
なども、注意する必要があります。

あれ?おや?と思うサインを、見逃さないようにしましょう。
子どもは、常に何らかのサインを送ってくれています。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.14】
〜児童虐待、保護者の様子とケアのポイント〜

「児童虐待」は、子どもからのサインを見逃さないことが重要ですが、親の様子からも虐待に気づくことができます。

親のサインには次のようなことがあります。
まず、子どもに対する態度として、接し方が乱暴で威圧的、体罰を肯定する/子どもに対して拒否的、冷たい/子どもに対して無関心若しくは過度な依存がある/病気や怪我をしても治療を受けさせていない
などが挙げられます。

親自身の態度として、感情的になることが多く、精神的に不安定/被害者意識が強い/子どもの園での様子に関心を示さない/アルコール依存や精神疾患が疑われる/子どもや家族のことを話すことを嫌う/懐疑的・攻撃的で人間関係を築くのが困難
といったケースも、虐待のリスク要因として注意する必要があります。

保護者の置かれた状況からも、サインを見つけることができます。
夫婦仲や祖父母との関係が良くない/両親のうち一方が失業中など、経済的に苦しい/親しい隣人や親戚が近くにおらず、周囲から孤立している/家庭訪問の際に室内が片付けられていない/近所から「怒鳴り声が聞こえる」などの情報がある
といった場合も、要注意です。

ケアのポイントとしては、虐待かも?と思ったときは、私たちには通報の義務があります。通報の対象は、児童虐待を受けたと「思われる」児童を見たときに、ということになっています。怪しいと思ったときには、早めに通報する必要があります。DVの場合は通報にあたり本人の同意が必要ですが、児童虐待の通報は、親、本人の同意は不要です。

そして何よりも重要なのは、虐待に至らないようなケアを行なうことです。
そのためには「早期発見・早期解決」を合言葉にしましょう。虐待が深刻化する前の早期発見・早期対応、そのためには、虐待のサインを見逃さないことが大切です。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.15】
〜情報社会の中の産後ママ〜

現代女性を取り巻く環境と問題点の一つに「情報社会」も挙げられます。
情報社会は便利な一方で、産後ママにとってメリットもデメリットもあることを理解しておくべきです。

情報社会のメリットとして、いつでもどこでもリアルタイムに、かつ簡単に情報を得ることができるようになったことがあります。これは、特に特に近年のスマートフォンの普及により顕著になりました。
また、声だけでなく動画での会話を手軽に楽しむこともできるようにもなりました。特に遠方にいるご両親にお子さんの状況を伝えるのに、動画やテレビ電話などが使えるようになった点などは、小さなお子さんをもつママたちにとって、情報社会ならではのメリットの一つといえるでしょう。

一方で、情報過多になりすぎて、どれが正しい情報なのかの判断が難しくなってきている、というデメリットもあります。
ネット上の情報に振り回され、逆にストレスを溜め込むケースも少なくありません。

ネット検索で得た医療情報など信頼できるものなのかを確認するには限界があります。間違った医療知識で子どもに対応すると危険が伴う点を理解してもらうことがとても重要です。
特に産後の精神状態を考えると、メディアリテラシーが低くなりがちで惑わされやすいため、注意が必要です。

また、ネットに依存しすぎてしまう産後ママも少なくありません。授乳のときさえもスマートフォンなどが手放せないネット依存気味の母親たちが増え、子どもとのふれ合いのなかでコミュニケーションを育むことができなくなる恐れも出てきています。

ネットに依存しがちな産後ママに対するケアのポイントとして、産後は目に負担がかかりやすくなっているため、スマートフォンなどの使用はあまりしないようなアドバイスを心がけてください。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.16】
〜マニュアル依存の産後ママの増加〜

ネットに依存してしまう産後ママの増加とともに、マニュアルに依存しがちな産後ママも増えています。
マニュアル依存の産後ママの象徴的な言葉として
「私用のマニュアルを作ってください」「マニュアルどおりにやっていても、泣き止みません」「マニュアルどおりにすれば、いい子になりますよね」…
などがあります。実際に、産後ケアの現場で言われた言葉でもあります。

マニュアルは、決して悪いものではありません。原則は大切です。
しかし、そのマニュアルに縛られてしまうと、結果として子育てが不安になったり、子どもと向き合えなくなってしまうことがあります。

産後ママは、病院や序産院で、育児の方法、たとえば授乳・沐浴・おむつ交換・あやし方などのスキルを教わります。これらは基本的で一般的な方法に過ぎません。子どもの性格は様々で、時には基本的な方法から応用させていくことが必要で、母親には柔軟性が求められます。
初めての育児で、マニュアルどおりに進めようとするあまり、壁にぶつかり戸惑い、不安に陥る産後ママも少なくありません。

ケアのポイントとしては、そういうときこそ、産後ママの努力をねぎらい、子どもの性格や成長、発達は様々であることをお伝えしつつ、子どもにとってよりよい方法を一緒に見つけ出していく存在が、とても重要になります。
また、母子手帳を活用することもオススメです。母子手帳には、産後ママが悩みがちな、子どもの成長、発達、食事のことなどが網羅的に記されているため、利用をすすめるとよいでしょう。

【産後ケアリストの必要性と活躍の場.17】
〜ママ友との関係〜

子育てをめぐる現代の環境は、一昔前と比べると変化してきていることを様々な面からお伝えしていますが、最後に「ママ友」との関係について触れておく必要があります。

母親学級や産後エクササイズのクラス、保育園や幼稚園で同じ年齢の子どもをもつ母親とママ友になることは多くあります。

ママ友とは、子育てに関する情報や悩みを共有することができて心強く、話題は尽きません。また、子どもを一緒に遊ばせることもできます。さらに、ママ友と食事を共にすることで、息抜きの時間が取れるというメリットがあります。
そして何より、同じような年齢の子どもを育てるママ友からの情報は、タイムリーで有用な情報として役立つこともあります。

しかし、子どもの発育と発達には個人差があり、正常から逸脱していないかどうかの心配から、次第に母親同士に競争心が芽生え、子どもが比較の対象になることがあります。
また、ママ友との食事の時間は息抜きの時間になることもありますが、場合によっては無駄な気遣いをする時間になることもあります。金銭感覚の違うママ友との付き合いで、交際費等が気になる方もいらっしゃいます。

ママ友は、学友や職場仲間のように自分の価値観に似通っていることで築かれる友情ではなく、子どもの年齢が近い、近くに住んでいるなどの理由から築かれる仲間で、本質的に友達の意味合いが異なる、ということを念頭においてください。
そのため、ママ友とは、距離感をはかりながら関係を築いていくことが理想である、といえます。

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